2018年2月19日月曜日

『人工知能の哲学』松田雄馬

本が面白いかどうかは、その本がどんな「問い」を立てているかに尽きると思う。
松田雄馬さん著『人工知能の哲学』はまさに問いが面白い。

著者はドラえもん好きらしい。

情報工学の専門家として、さまざまな最新技術にふれ、「人工知能」や「AI」がバスワードのようにネットにあふれる中で、「そもそも知能とは何か?」と本書は問う。

情報工学の歴史を紐解き、人が人の知能とどのようなものと捉えてきたのかが分かりやすい例と共に解説される展開がスリリング。

あと生命という自分の専門外の分野に果敢に突き進み、そこから情報工学が達成した知能、達成できていない知能を考察しているところも面白い。

ただ一方でもう少し言及が欲しかったのが、「意味」についての部分。最後の最後でふれられてはいるが、他の部分ほどの掘り下げはない。

おそらく人文・社会学の研究者であれば、本著が人間の外側にある【客観世界】を自明のものとして想定しているように見えるところが引っかかるのではないだろうか。

文化人類学者の私から見ると知能は人間の中にあるのではなく、世界と個人の間にあるもののような気がする。この辺り、松田さんにぜひ直接聞いてみたい。